Self Lesson 5

女性の人権問題

「人は皆、生まれながらに平等の権利を持っており、等しく尊重されるべきだ」ということが基本の考え方は、18世紀のフランス革命時に芽生えました。「男女平等」の考え方が世界に広まるには、20世紀に至るまで年月を要しました。日本では、1946年に日本国憲法の下で基本的人権がうたわれ、婦人参政権が認められてから、まだ100年も経っていません。

身の回りで「女性の人権が尊重されていないと感じること」を質問した県民アンケートの結果、

「社会システムに問題があり、女性の社会進出を困難にしていること」(68.7%)
「男女の固定的な役割分担意識の押し付け」(53.2%)
「職場における待遇の違い」(48.0%)

の3つを挙げる人が多くなっていました。(H30年「県民アンケート調査」より)

女性の人権に関わる差別意識は、背景にある「固定的な男女観」に原因があると考えられます。その意識は、「ことば」の端々に現れ、それを耳にした女性が、差別を実感することがなくならないのではないでしょうか?

「家事や育児は女性の役割」「男は仕事、女は家庭」「女のくせに」・・こうした差別発言はなくなったかといえば決してそうではありません。社会的地位の高い人ですら、「少子化は女性が社会に出て、子どもを産まなくなったせいだ」、「子どもを産まない女性は生産力がない」などという失言を発し、謝罪することもなくなりません。なぜでしょうか。

1979年に国連が「女子差別撤廃条約」を採択し、日本も署名し、「男女雇用機会均等法」を作りました。1999年に「男女共同参画社会基本法」が制定され、様々な取り組みが強化されて、まだわずか20年余り。先進国では、女性の男性に対する賃金比率は、近年、上昇傾向にはありますが、依然、日本は先進国の中で低いことが指摘されています。その理由は、働く女性の5割以上が非正規労働者であるという日本社会の構造的問題が壁になっていると言われています。

世界の民主主義国では、議員に占める女性の比率を決めたり、社会制度を大きく変えて男女平等を進めてきましたが、「男女格差指数ランキング(ジェンダー・ギャップ)」(※)では日本は、146か国中116位という下位に位置づけられています。

上位は、1位アイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェーと北欧が並び、G7では、ドイツ(10位)、フランス(15位)、イギリス(22位)、カナダ(25位)、アメリカ(27位)、イタリア(63位)。G7の他国に比べて、日本はなぜこのように低評価なのでしょうか?理由は、男女の賃金格差、女性の管理職比率、政治参加などの評価が低いためと指摘されています。
男女格差(ジェンダー・ギャップ)の問題では、日本は先進国とは言えません。

その根底にあるのは、男が外で働き家計を支えることは当然だ、という社会制度設計が 近代において長く続いてきたことではないでしょうか?
もう1つ言えることは、20年間以上、企業や団体、学校では「男女差別」や「セクシャルハラスメント」について研修や教育が浸透してきました。例えば、女性社員の「お茶汲み」を撤廃したり、個人のプライバシーである結婚や出産についての無頓着な発言はしないよう厳しく指導されてきました。しかし、古い「男女観」、「伝統的家庭観」に縛られたままの人たちが一定数おり、時々、不適切な発言や行動をするケースがあるようです。これは女性の人権に関して考える機会を逸していることにも原因があるのではないでしょうか。
もちろん、上の世代でも高いジェンダー意識を持った人もたくさんいます。しかし、全体として日本は男女平等社会の実現はまだまだであり、「男女共同参画」への取組は急務である、と言えるでしょう。

※:世界経済フォーラム版・男女格差指数(2022年)

女性の人権問題の事例

セクシャル・ハラスメント

配偶者からの暴力
(ドメスティック・バイオレンス=DV)

ストーカー行為

男女平等社会の実現
(男女間の雇用、賃金、活躍機会の格差)

こうした女性の人権を侵害するような出来事の相談件数がなくならないのは、悲しい現実です。そして、女性に対する暴力は言語道断で法的に処罰される犯罪になります。
女性の人権問題を解消し、男女平等な社会を実現するには、「学ぶこと」が大事です。「じぶんの人権感覚は遅れているのではないか」と客観的にチェックすることや、「海外の先進国ではどうしているのか」を知ることも良いでしょう。「異なる他者への寛容の心」があれば、多くの人権問題は解消の方向へ向かうでしょう。
女性の人権問題の感度を高めるためには、「男女の役割分担」の固定観念を一度疑ってみることも「男女平等」を考える機会になります。例えば、「女医さん」という言葉はありますが「男医さん」という言葉はありません。「婦人」「未亡人」「家内」という女性だけに使われることばもあります。何気ない日常会話にも私たちの社会の「人権意識」を考えるヒントはあります。
大人になっても、学び続けること、人権について考える機会を得ることで成長していくことは大切です。一人の人間としてお互いを「慈しみあう生き方」ができれば、男女平等社会に一歩近づくことになるに違いありません。

5分で考える人権問題

新潟県は様々な人権課題に取り組んでいます。

子どもの人権

インターネットを悪用した人権侵害

同和問題に関する偏見や差別

障害を理由とする偏見や差別

女性の人権

刑を終えて出所した人に対する差別や偏見

犯罪被害者とその家族の人権

高齢者の人権

北朝鮮当局による人権侵害問題

ホームレスに対する偏見や差別

アイヌの人々に対する偏見や差別

性的指向や性自認を理由とする偏見や差別

外国人の人権

人身取引

感染症患者等に対する偏見や差別

東日本大震災に起因する偏見や差別

新潟水俣病被害者に対する偏見や差別